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  • 執筆者の写真伊牟田インストラクター

こんにちは

人生100年時代、健やかに動き続けるための身体を共創する

Physio Pilates (フィジオピラティス)文京本郷の副代表 伊牟田真樹です


今回のテーマは“飲み込み力向上のカギは姿勢にあり”です。



人生100年を健やかに活動し続けるために、“快適に歩き続ける”ということも大事ですが、“美味しくご飯を食べ続ける”ということも重要になりますよね。そんな“食べる”という行為にも姿勢が重要となります。


え、飲み込む力と姿勢って関係しているの?


もちろん関係しています。みんな何気なく食べ物や飲み物を飲み込んでいると思うのだけど、飲み込む力というのは50歳前後から徐々に落ちていくんだ。そして、その飲み込む力というのは姿勢と大いに関係するので、今日はその点を説明していくね。




100年美味しくご飯を食べ続けるために、学んでいきましょう!



1. 知っているようで知らない、飲み込みに必要な筋肉

モノを飲み込み、胃へ送ることを“嚥下(えんげ)”ということは一般的に知られていると思います。口に運ぶ行為から含めると、モノを口に運び、咀嚼して飲み込み、そして胃へ送るまでに必要とされる筋肉は、約40もの筋肉を使用します1)。この多くの筋肉を意識的・無意識的に使用することで、“モノを口の中へ取り込み、モノを噛み、そして飲み込む”の作業が行えているということですね。


そのモノを飲み込む際に、“舌骨(ぜっこつ)”という骨が引き上げられ、“喉頭蓋(こうとうがい)”が気管(空気の通り道)に蓋をしてくれるために、我々は食道へ無事にモノを運べているわけですね。この喉頭蓋によって気管をうまく塞ぐことが出来なかったり、タイミングが合わずに誤って気管へモノが入ってしまうことを“誤嚥”というわけです。

舌骨という骨につく筋肉たち

この舌骨という骨は、人体の中で関節の形態を呈さない宙に浮いた極めて珍しい存在なのです2)。この舌骨には舌骨を引き上げる舌骨上筋群(オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋)と、舌骨を引き下げる舌骨下筋群(胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋)が付いており、上下の絶妙なバランスで宙に浮き、モノを飲み込む際に重要な働きをしています。


2. 姿勢が悪いと、なぜ飲み込む力に影響するのか

① 誤った姿勢により、上下のバランスが崩れる!?

この舌骨へ付く舌骨下筋群は胸骨・鎖骨・肋骨そして肩甲骨といった骨に付着することから、姿勢に大きく影響を受けます。例えば、猫背で頭が前に出ている姿勢の場合、顎や肩甲骨から舌骨に付く筋肉は常に伸ばされている状態となり、上下のバランスが悪くなってしまいます(図1)。また、一見姿勢は良くても肩甲骨が常にすくんでいる姿勢の場合は、舌骨下筋群が常に縮まって緊張している状態となり、いずれにしても舌骨を引き上げる筋肉へ負担をかけてしまうことが推察されます(図2)。

報告によると、この舌骨の密接な関係にある喉頭と呼ばれる部分3)4)は、特に女性において70歳以降に位置が下がり、飲み込む作業のために舌骨をより引き上げることが必要とされ、舌骨を引き上げる筋肉が作業性肥大(たくさん使いすぎて太くなっていること)を引き起こしているとされています5)。


こちらは上記の事からの推察となりますが、年齢とともに舌骨を引き上げる筋肉のトレーニングももちろん重要ですが、下から引っ張る筋肉の状態をより良くし、舌骨を引き上げやすくすることも重要だと考えます。


②上を向いた姿勢では気管に蓋がしづらい!?

皆さんは大きな声を出す時や、歌を歌うときに下を向きますか?それとも少し上を向きますか?

また、唾を飲み込むときに下を向きますか?上を向きますか?


多くの人が少し上を向いた方が声を出しやすく、そして、唾を飲み込む際は下を向く(顎をひく)のではないでしょうか。


この動作には喉頭蓋と呼ばれる気管の入り口に蓋をする部位が関係します。

この喉頭蓋と呼ばれる部分は、上を向いたときに蓋が開いた状態となりやすく、下を向いたときに蓋が閉じた状態になりやすい特性があります。

なので、無意識のうちに大きな声を出す際は少し上を向き、飲み込む動作の際は下を向く(顎をひく)のですね。


ところが、猫背で顎が上がった姿勢となっていると、顔は前を向いていたとしても、相対的に上を向いた状態となり、この喉頭蓋が開いた状態になりやすいのです。

すると、この蓋を閉めるために舌骨を頑張って引き上げなければならず1)、多くの筋肉の活動を必要とすることが容易に想像できます。



3. 飲み込む力を向上させるために気を付けるポイント

①日々、肩甲骨を大きく動かしましょう。

肩甲骨を大きく動かすことは、姿勢が良くなるだけでなく呼吸も深くなり良いことばかりです。舌骨に下から付く筋肉は、呼吸や姿勢に影響を受ける筋肉ですので、是非肩甲骨を動かす体操を心がけましょう。

動画で紹介していますので、添付したURLをクリックし、確認してみてください!


②顎を引くトレーニングで首の適切な位置を確認しましょう。

姿勢には気をつけていても、現代の生活様式ではスマホやパソコンを長時間見たりしていて、知らず知らずのうちに顎が上がりやすいです。顎をひくトレーニングをし、飲み込む際に必要な筋肉を日々刺激するようにしましょう!

こちらも動画で紹介していますので、添付したURLをクリックし、確認してみてください!


③背骨の適切な位置、しなやかな動きを手に入れましょう。

頭は体の一番上に位置するので、なんといっても背骨の環境が重要です。背骨をしなやかに、かつ安定させられる状態にしておくことで、頭を自然に良い位置に保つことができ、頑張らずに飲み込む筋肉を働かせることが可能となります。

こちらも動画で紹介していますので、添付したURLをクリックし、確認してみてください!



最後に

今回は理学療法士および運動療法としてピラティスの専門家の立場から“飲み込む力(嚥下)と姿勢との関係性”について書かせていただきました。ですが、嚥下や発声には様々な要因も関わることから、今現在飲み込みづらさや、声の出しづらさを感じている方はまずは専門医の診察を受けることをお勧めいたします。その上で、姿勢の改善など全身の運動が推奨された際には、我々フィジオピラティスのインストラクターがサポートさせていただきますので、ご連絡をお待ちしております。



  1. 井出吉信 摂食・嚥下障害を理解するための解剖 歯科学報, 109(3):324-330

  2. 三枝英人 舌骨上筋群の解剖 耳展, 53 : 4 ; 246~253, 2010

  3. 古川浩三 嚥下における喉頭運動のX線学的解析 -特に年齢変化に付いて 目耳鼻, 87 : 169-181, 1984

  4. 中原学 嚥下時における舌骨運動のX線学的研究  目耳鼻, 90 : 669-670, 1987

  5. 韓萌 高齢者における茎突咽頭筋の形態学的研究  日摂食嚥下リハ会誌 11(1): 3-12,2007

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