こんにちは、Physio Pilatesの伊牟田です。
私は先日、新潟で開催された日本骨粗鬆症学会に参加してきました。

皆さんは「骨粗鬆症」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。
「高齢になると骨が弱くなる病気」「女性は閉経すると骨密度が下がる」
こうしたイメージを持っている方は多いと思います。
実際、女性は閉経に伴って女性ホルモンであるエストロゲンが減少し、骨量が低下しやすくなります。そのため、閉経後の女性にとって骨粗鬆症の予防や治療が重要であることは間違いありません。
しかし、今回の学会で改めて印象に残ったのは、
「骨粗鬆症は、高齢になって骨が減り始めてから考えるだけでは不十分である」
ということでした。
1. 将来の骨の強さは、若いうちから決まっていく
私たちの骨は、子どもの頃から成長とともに強くなっていきます。
特に思春期は、骨量が大きく増加する大切な時期です。そして若年期に、生涯で最も多い骨量である「最大骨量(Peak Bone Mass)」に到達します。

出典:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025
その後、年齢を重ねるにつれて骨量は徐々に減少し、女性では特に閉経後に減少が加速します。
ここで重要なのは、
「将来どれだけ骨が減るか」だけではなく、「若いうちにどこまで骨をつくることができたか」も、その後の骨の健康を左右する
ということです。
イメージとしては、若いうちにつくる骨は「骨の貯金」のようなものです。
十分な骨量を獲得してから年齢を重ねるのか、もともと骨量が少ない状態から年齢を重ねるのか。
同じように加齢によって骨が減っていったとしても、そのスタート地点によって将来の骨粗鬆症リスクは変わってきます。
つまり、骨粗鬆症予防は高齢になってから始まるのではなく、骨をつくっている思春期・若年期からすでに始まっているのです。
2. 若い女性の「痩せ」と骨の関係
今回の学会では、若年女性の低体重についても多く取り上げられていました。
低体重や過度なダイエットが骨に影響する理由は、大きく3つの方向から考えることができます。
一つ目は栄養です。
骨をつくるためには、十分なエネルギーと栄養が必要です。食事量が不足すれば、身体は生命維持を優先するため、骨をつくるために十分なエネルギーを使いにくくなります。
二つ目はホルモンです。
エネルギー不足が続くと、女性では月経が乱れたり、無月経になったりすることがあります。それに伴う女性ホルモンの変化も、骨の健康に影響します。
そして三つ目が、身体を動かすことで骨に加わる刺激です。
骨は、立つ、歩く、走る、筋肉を使うといった日常の活動によって力学的な刺激を受けています。こうした適切な刺激も、丈夫な骨をつくるためには重要です。
低体重に加えて筋肉量や身体活動まで少なくなれば、骨に加わる刺激も不足しやすくなります。
つまり骨を丈夫にするためには、
「しっかり食べること」「身体の正常な働きを保つこと」「適切に身体を動かすこと」
のどれか一つではなく、すべてが大切なのです。

3. 若い頃の健康は、妊娠やその先にもつながっている
さらに興味深かったのが、若年女性の低体重を「本人の将来の骨粗鬆症」だけで考えてはいけないという視点です。
若い頃の低体重がそのまま妊娠する年代まで続けば、妊娠前から十分な栄養状態を確保できていない可能性があります。
妊娠前の低体重は、早産や低出生体重などとの関連が報告されています。
もちろん、痩せている女性が妊娠すれば必ず問題が起こる、という意味ではありません。
大切なのは、妊娠してから初めて健康を意識するのではなく、妊娠する前から自分自身の身体を健康な状態にしておくことです。
そして、生まれてくる子どもの成長まで考えれば、若い女性の健康を守ることは、その人自身の数十年後だけでなく、次の世代の健康にもつながっていく可能性があります。
骨の健康を考える時間軸は、私たちが思っている以上に長いのかもしれません。
4. なぜ日本では「痩せ」が問題になるのか
世界的には肥満が大きな健康問題となっている一方で、日本や韓国では若い女性の痩せが問題となっています。
ここには食生活だけではなく、
「痩せている方が美しい」
という社会の価値観も関係していると考えられています。
テレビ、広告、ファッション、そして現在ではSNS。
細い身体を「理想的な身体」として繰り返し目にしていれば、医学的には適正な体重であっても、「もっと痩せたい」と感じることがあるかもしれません。
だからこそ、この問題を本人の努力だけに求めて、「もっと食べましょう」と伝えるだけでは十分ではありません。
私たち一人ひとりが、
「痩せていること=健康なのか」「健康的な身体とは、どのような身体なのか」
を考える必要があるのだと思います。
5. 「何kgになったか」よりも大切なこと
私たちのスタジオに来られる方の中にも、「可能であれば痩せたい」と希望される方は少なくありません。
もちろん、現在の体重が健康上のリスクになっている場合には、適切な食事と運動によって適正な体重を目指すことは大切です。
ただし、私たちは運動の目的を「体重を減らすこと」だけにはしたくないと考えています。
筋肉に適切な刺激を与えること。
筋力や筋肉量を維持・向上させること。
そして何より、自分の身体を自分の思い通りに動かせるようになること。
こうした身体そのものの機能を高めていくプロセスが大切です。
適切に食べ、適切に身体を動かし、筋肉や骨に必要な刺激を与える。
その結果として、必要な人の体重が適正な範囲へ変化していくことはあるでしょう。
しかし、痩せる・痩せないは結果の一つです。
「何kgになったか」という数字だけではなく、「以前より身体を動かせるようになった」「筋力がついた」「疲れにくくなった」「自分の身体に自信を持てるようになった」。
そうした変化もまた、健康になるということではないでしょうか。

6. 骨粗鬆症予防は、何歳から始めるものなのか
骨粗鬆症は、高齢者だけの問題ではありません。
高齢になってから骨を守ることはもちろん大切です。
しかし、その前には「若いうちにどれだけ骨をつくれたか」があり、さらに食事、運動、月経、妊娠など、人生のさまざまな出来事がつながっています。
だからこそ、
骨粗鬆症予防は、骨が減り始めてから始めるものではありません。
骨をつくっている若いうちから、すでに始まっています。
体重計に表示される数字だけを健康の基準にするのではなく、しっかり食べ、筋肉を使い、自分の身体を思い通りに動かす。
そして、それを何歳になっても続けられる身体をつくっていく。
「痩せた身体」ではなく、「生涯、自分らしく動き続けられる身体」を目指すこと。
今回の骨粗鬆症学会への参加を通じて、それこそが若いうちから骨と身体の健康を考える意味なのではないかと、改めて感じました。

参考文献
1) Harel Z. Bone metabolism during adolescence: the known, the unknown, and the controversial. Adolesc Med State Art Rev. 2008;19(3):573-591.
2) De Souza MJ, Nattiv A, Joy E, et al. 2014 Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement on Treatment and Return to Play of the Female Athlete Triad. Br J Sports Med. 2014;48(4):289. doi:10.1136/bjsports-2013-093218.
3) Importance of changes in body mass index from adolescence to middle age as a risk factor for osteoporosis: the Japan Nurses' Health Study. Menopause. 2026.
4) Murofushi Y, Yamaguchi S, Yoshizawa Y, Tamura Y. A quarter of young Japanese women are underweight: thin-ideal internalization and self-esteem mediate exercise habits and body satisfaction, but different mechanisms with normal-range weight. BMC Public Health. 2025;25:4068. doi:10.1186/s12889-025-24537-8.
5) Impact of Maternal Underweight on Infant and Maternal Outcomes in Japanese Women: A Systematic Review and Meta-analysis. 2025.





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